東京新聞「社会派ロビイスト 民間からの政策立案に力を入れる」

2008年6月10日(火)28面

社会派ロビイスト

大流行が懸念される新型インフルエンザへの対応で、省庁や地方自治体の政策立案に助言する「新日本パブリック・アフェアーズ」は昨年から、専門家などと協力し「最悪で二百十万人以上の死者が出て国内総生産(GDP)の4%に当たる二十兆円の経済損失が出る推計がある。危機管理として最重要課題だ」と位置付けた。欧米に比べ対策が遅れる政府に腰を上げるよう、自発的に収支度外視で提言した。

ロビイストの仕事は企業などを顧客に、政治家や官僚に働き掛けること。最近は、社会的な問題に関与する動きも出てきた。

民間からの政策立案について、同社の小原泰代表は「小泉改革で政官業癒着の密室政治体質が崩れ始めた。政策立案業務をほぼ独占してきた官僚も、情報公開法と政策評価制度の導入で、情報の独占ができず、税金の使途にも市民の監視が広まるなど霞が関の地盤沈下が起きたことで、民間の声が届く機会が来た」と説明する。

小原さんの亡父・泰治氏は、米国の政財界に通じるロビイストで、日米の通商摩擦を解消した陰の立役者といわれた。「幼いころから政策一つで国の命運が左右するダイナミズムを肌で感じてきた」という。大学卒業後、米国のロースクールで学び、ワシントンの法律事務所などでロビー活動に関与。一九九六年に帰国し、ロビイストとして活躍する。

同社には会計士や元キャリ官僚、ITコンサルタント、与野党国会議員の政策秘書経験者ら多彩な人材が集結する。「政府の税金の無駄遣いなどを追及し、議員立法に際し共同戦線を張っている。問題発見や調査能力に優れたプロ集団だ」とある野党議員は明かす。

米国には約三万人のロビイストがいる。多くは法律事務所、会計事務所に属するが、元議員も活動。日本ではソフトバンクの嶋聡社長室長か民主党の元国会議員だ。「今国会で審議中の携帯電話の有害サイト規制法案では、ネット文化保護の視点も加えるよう求めた」と話す。

「幸せ」提言の流れ

業界団体も社会を意識した動きを見せる。二〇〇五年十月に、百十一万人の酒税減税署名を政府に提出したビール酒造組合の斎藤恒存審議役は「大衆消費財という特性もあり世論の支持は不可欠だ」とキャンペーン展開した理由を説明した。

衆参両院で第一党が異なる「ねじれ国会」が、こうしたロビー活動への追い風にもなっているという。外資系証券会社のロビー担当者は「国会論戦が政治決定の表舞台となり、国民が納得できる政策が重要な要素になった」と分析する。

昨年六月には、政治家秘書や広告会社の関係者ら約二十人が「ロビー活動勉強会」を設立した。インテル東京本社の政府渉外部長、杉原佳尭さんは「日本の国際競争力や生活の利便性向上にも貢献できる」と語る。事務局を務めるPR会社ベクトルの西江肇司社長は「地方にもロビー活動の需要がある」とビジネスの可能性も付け加えた。

小原さんは「特定の企業や団体の利益を優先させるだけの時代は終わった。企業もロビー産業も国民に幸せをもたらす政策提言をしていかなければ」と語った。