広報会議2010.05版「国や政府を動かすロビー活動とは?」

2010年4月1日(木)

リコール問題を受け、トヨタ自動車は米国で、ロビー活動を行ったと報道された。日本では馴染みの薄いロビー活動とは、どのような人が、どのようなことを行うものなのか。米国のロビー活動事情に詳しく、自らも日本でロビー活動を行う小原泰氏に聞いた。

「ロビー活動とは、立法府への陳情、働きかけのことで、日米ともに憲法に定められた請願権行使の一形態です」と、小原氏は話す。米国の場合、ロビー活動は一般にもよく知られており、日本企業も現地でロビー活動を行なっていることが多い。「大企業であれば、ワシントンでは数社前後に依頼しているところもあります。今回の米国におけるトヨタ車リコールのように大きな問題の場合、各方面に向けてのロビー活動が必要だと思います」。

米ロビイストは官民の回転ドア

「ワシントンでは石を投げればロピイストに当たるといわれ、その数は2~3万人。それぞれパックグラウンドや専門とする領域は異なります」。米国では「ロピイング・ディスクロージャー・アクト」という法律によって、ロピイストの活動やその依頼者といった情報がすべて公開されており、オープンな形でロビー活動が行われている。小原氏は活動スタイルによって、米ロピイストを4タイプに分類する。

  1. PR会社あるいは広告会社系
     一般大衆に広く訴えかけることによって、政府機関を動かすタイプ。ピンクリボン活動はこのタイプのロビー活動によって広まった。
  2. 政府高官、連邦機関の委員など専門分野に強い官僚出身者
     例えば、運輸省の自動車担当をしていた経験を活かし、専門領域で政策を誘導していくタイプ。
  3. 閣僚を辞めた、あるいは引退した大物議員
     議員時代の人脈の広さに加え、パワーポリティクスに精通しているため、国際間にまたがるロビー活動を手掛けることもある。
  4. 法律事務所や会計事務所系
     法律や税務に精通しているため、新しい法律の立法時や改正時に行われるパブリックコメントに対して、逐条にわたる精査を行い、専門的な意見を提出することが特徴。

「米国のロピイストの基本は”官民の回転ドア”。つまり政府と民間を行ったり来たりしながら、依頼内容の実現に向けて専門性を武器に働きかけていく存在なのです」。またメディアとのリレーションも強いことから、場合によっては企業のスポークスマンになることもある。

日本におけるロビー活動のスタイル

日本では馴染みの薄いロビー活動だが、実は身近な政策分野においても行われている。小原氏自身は最近、子宮頚がんワクチンのロビー活動に尽力した経験を持つ。日本でもこれからロピイストが活躍する機会が増えるだろうと見ている。「昨年の政権交代を機に、永田町と霞が関の癒着に国民視点というメスが入り、政治主導で大きく動き始めた今、ロビー活動のあり方も変わってくるでしょう。従来のロビイストは特定の企業の利益を代弁して動いていましたが、これからは”唱道(アドボカシー)”という考え方が必要。近江商人の”三方善し(売り手善し、買い手善し、世間善し)”という言葉があるように、より中立的な立場で持続可能な社会という視点から問題を解決することがまられてきます。これから日本においては、利益誘導型ではなく、長期的に世の中のためになるロビー活動が必要になってくると思います」。