オピニオン

これからの日本に必要なPPPとは?

黒石匡昭
新日本有限責任監査法人パートナー
インフラPPPアドバイザイーグループ


1999年に公布された「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関数法律」、いわゆるPFI法によって幕を開けた我が国のPPPは、その後、包括的民間委託(2001年)、指定管理者制度(2003年)、市場化テスト(2006年)など、公共サービスへの更なる民間参入を促すための様々な法制度が順次整備・導入されたことにより、先進諸外国と比較しても一定の環境が整いつつあると言える。

しかし、これまでの約10年間に実施されてきた数々のPPP案件に鑑みるに、その実態は”官民連携パートナーシップ”という言葉から連想される理念からは、まだまだほど遠いと言わざるを得ない。

例えば、我が国のPFI案件のほとんどは、官公庁舎、教育・文化施設、病院などの社会インフラが中心であり、道路、鉄道、空港などの経済インフラと比較して、個々の案件規模が小さく、必ずしも民間事業者にとって魅力的な案件が多かったとは言い難い。かつ、小規模案件であっても、民間に移管された責任・役割と権限・裁量は極めて限定的であり、その事業収入でも政府・地方自治体の財政支出に依存したサービス購入型が大半であるため、官民双方にとって、より効率的な公共サービスを実現していくためのインセンティブが有効に機能していたとも言い難い。民間事業者から見て、そもそもの期待収益が低く、かつ創意工夫を発揮する余地が極めて小さい案件が大半を占めてきたというのが、これまでの日本のPPPの実態といっても差し支えなかろう。

道路、鉄道、空港などの経済インフラ領域への対象の拡大、コンセッション方式の導入などを骨子とする、今般のPFI法改正によって、民間事業者にとって魅了的なPPP案件の形成が期待される。しかしながら、政治的リーダーシップの欠如、硬直的な人事労務制度、融通の利かない各種法制度(会計・調達)手続きの適用、受け身型の業者体質等々、制度がいくら改善されても、制度の理念に逆行する旧態依然とした体質が改善されない限り、つまりは制度を運用する官民双方の主体の意識が根本的に改革されない限りは、いたずらに屋上屋を架すばかりであり、真のPPPによる公共サービス改革は到底不可能である。

道路、水道をはじめ、将来のわが国のインフラ施設の更新投資は膨大な金額にのぼる(一説によると数百兆円)とも指摘されているが、その財源についてはいまだ手当ての見通しが立っていない。また、少子化による我が国の国内市場の縮小が指摘されるなか、空港、港湾をはじめとした一部のわが国インフラの競争力は、すでにアジアの周辺国に追い抜かれ、国外からヒト・モノ・カネを呼び込む”逆転”成長戦略の実行が急務となっている。

ここにこそPPPの理想と真価が発揮されるべき余地がある。もはやPPPの期待効果としてVFMとして評価されるべきは、公共サービスのコスト削減効果(財政負担の軽減)のみならず、創意工夫による収益増大効果(国の成長戦略の実現)なのである。

我々は、”パブリックガバナンスの改革”という自らのミッションに忠実に従い、PPPのステークホルダーである政府・自治体、民間企業、そして公共サービスの利用者いずれもがWin-Win-Winとなる「真のPPP]を実現するために全力を尽くすとともに、「真のPPP」が財政再建、行政改革、公務員制度改革へとつながる総合的公共サービス改革の起爆剤となり、我が国の再建に向けた大きな一歩になるものと期待するものである。